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Gaze -刻まれし視線 -《竹富栄治展》

2024年2月6日〜12日​ 北九州市立美術館 本館アネックスにて

10代の終わりに描くことの中に人生の軸を見つけようと決意し、気づくと還暦を迎えていました。この約40年を振り返る本展覧会では、二紀展で発表してきた100号~150号の作品を中心に、未発表作を含む55点余りを展示。北九州市では初の展覧会となりました。
主に人物を含む生物をモチーフとして描いてきましたが、かつて描いた人物や動物たちの目を見ていると、現在の自分が過去の自分に見られているような錯覚に陥ります。自分で生み出した者たちであるにもかかわらず、厳しく何かを問われているかのようです。
まだまだ道半ばではありますが、その時々において精一杯描いてきた作品です。「絵を描き続ける者」の末端の一例に加えていただけたら幸いです。

第1室

主に2002~2017年制作のクジラをモチーフとした作品

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それまでは先人たちの技の探求が描くモチベーションの一つでもあり、古典的絵画技法を用いた作品を描いていましたが、2002年より、鉛筆、木炭、和紙、墨汁、アクリル、砂などを用いた制作を始めました。それは、制作のモチベーションの重きが「技術習得」から「テーマ」へと移行した表れかと思います。当時の描きたいイメージを具体化するためには、時間をかけて積み上げていく古典技法ではなく、即興的アイデアが入りこみやすい材料のほうが有効だと考えたように思います。この転換にはおそらく自分の中で短くはない準備期間があったのだろうと思いますが、自己分析ほどあてにならないという考えに賛同しつつも、2001年9月11日にニューヨークを襲った事件が、転換の大きな引き金になったことは間違いないと思います。ウィーン留学する直前にニューヨークを一人旅しました。その時、自然史博物館で見た精巧な等身大模型のクジラは、直前にメトロポリタン美術館で見たレンブラントの印象を薄めるほど、私に大きな感動を与えました。それ以来クジラは私の中で文化繁栄の象徴として君臨していましたが、2001年9月11日の事件後、クジラが人間以上の大きな存在として、人間社会に現れるイメージが私の中で立ち上がり、どんどん膨らんでいきました。それ以降、私は私の中のクジラが動くままに、それを描き続けることとなりました。

第2室

主に1985~2000年制作の西洋古典絵画技法をベースに描いた作品

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大学2年生の頃から古典絵画に興味を持ち、尊敬と憧れをもってその技法探求することに夢中になりました。特にフランドル絵画、オランダ絵画に関しては初期、バロックともに好きで、ファン・エイク、ハンス・メムリンク、ヒエロニムス・ボス、ピーテル・ブリューゲル、ピーテル・パウル・ルーベンス、レンブラント・ファン・レイン、ヨハネス・フェルメールなどから、技法、モチーフともにたくさんの影響を受けてきました。またこの時期の後半はフランスの新古典主義の画家たちやクールベなどへも興味の対象は広がっていきました。このころ培った、厚みや質からくる油絵具の物質感を、描かれたモチーフの存在感と、絵画全体の「もの」としての存在感へとつなげようとする「こだわり」は今も変わらず持ち続けている制作姿勢だと思います。 1991~1993年、私はウィーン美術大学の入試に合格し、ウィーン幻想派の一人であるアントン・レームデン先生の教室で学ぶことができました。ここではむしろ技術以外のところで自分の制作を方向付ける重要な経験をしました。中でも、レームデン先生が用意してくださった、他の門下生とともに行ったチェコ旅行は、生涯忘れられないものとなりました。この旅行の目的は、チェコのテレジーンにある、大戦時代の強制収容所となった施設に滞在し、その場で得られるインスピレーションをもとに制作したものを、まさに収容されていた場所で展示、公開するというものでした。ここで多くを語ることはできませんが、この経験はそれまでの私の価値観を崩壊させるに余りあるものでした。価値観を再構築させるのに随分時間がかかったように思います。「壁と裸婦」をモチーフにした作品たちは留学中及び帰国後、再構築の渦中で制作したものです。

第3室

主に2017年以降の作品とクジラ以外の動物をモチーフにした作品など

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最近の作品は、寓意的、シニカルと評されることがよくあります。 描く行為に至るモチベーションはさまざまであっていいと思いますが、私の場合、初めて感動を覚えた絵画が、中学生時代に友人宅の画集で見たサルバドール・ダリの「十字架の聖ヨハネのキリスト」であったために、自分の作品ができているかは別にして、人の意識に潜むものを絵画化することが絵を描くことだと早くに刷り込まれたように思います。作品制作の順序として言葉が先行することはありませんが、浮かぶイメージを具現化しながら言葉が徐々に湧き上がってくることはよくあります。その意味では、「進化・発展・歴史」という言葉が、「信頼と不信」という言葉とともに出てくることが多くなってきました。そういったことが最終的には作品に反映されていることは間違いないと思います。

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Gaze 刻まれし視線《竹富栄治展》は、おかげさまで無事に終了いたしました。決して交通の便が良いとは言えない場所にもかかわらず、東京・千葉・長野など遠方からも足をお運びいただきました。この7日間で759名というたくさんの方にご高覧いただけましたことは、私にとって今後の活動への大きな励みになります。皆様へ心より御礼申し上げますとともに、新たな創作へ向けて精進を重ねていきたいと、思いを新たにしています。

2024年2月13日 

Gallery

Exhibition

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Eiji Taketomi

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